【儲け】の定義

楽しく(無理なく)つくって、高く評価される

ご覧頂ければすぐに分かりますが、この定義は従来の儲けの感覚と若干異なるはずです。

 

 従来の儲けの定義は【売り−買い=儲け】つまり、「安くつくって(仕入れて)、高く売る」というものでした。

 ですから、この視点でブランドを定義すると、

 

@ブランドは「売り」の一部分(マーケティング的にはプロモーション)であり

Aそれは「より高く売る」あるいは「より多く売る」ことを助ける

B「より高く売るため」に、より良いブランドイメージを形成するか、または

C「より多く売るため」に、メジャー感を形成する

D従って、その仕事は対外的なコミュニケーション(広告、広報、 SP )に向けられる

 

 これら自体は、教科書的には非常に正しいと思います。問題は、あまりにも正しいと実際には誰もが実行可能なので、現実には競争が激しくて実行できなくなることです。

 

 まず「安くつくる」ことと「高く、あるいは多く売る」ことを考えてみましょう。

 

 このどちらかを高めることは可能です。

 ほとんどの会社は「技術・設備」から始まるか、あるいは「販売・サービス」から始まります。つまり「安くつくる」ことか、「高くあるいは多く売る」という片側の条件だけは満たせるわけです。そこで頑張れば「良いメーカー」あるいは「良いお店」として高い評価を得ることが出来ます。

 しかし、それは儲けに至る片道でしかありません。片方だけなら結局は「良いものをより安く」か、「高いモノを選ばれたあなたに」という商売を選ばざるを得ません。なぜなら、いずれも儲けはあるでしょうが、ガバガバという訳にはいかないです。従って資金も貯まらないし、投資も出来ないという状態になります。

 「安くつくる」ことと「高く(多く)売る」ことを同時に達成するためには、その両方へのコネクションが必要なのです。もちろん、そのコネクションを得る会社はたくさんあります。しかし、時間がかかる。今、この本をお読みのあなたに両方のコネクションがあるのなら、きっとこの本を読んでおられないでしょうから、ここからは「その両方のコネクションを得るのは現状で困難」という前提で、ここからの話を始めます。

 ではブランドマネージメントの側から「儲け」を考えてみましょう。

 まず、なぜ「儲け」は生まれるのか?そこから考えてみましょう。

 

 そんな初歩的な・・と思わず、是非この初歩を大事にしてください。なぜなら、あなたに知ってもらいたいのではなく(たぶん、あなたなら感覚としてわかるでしょう)、部下が「腑に落ちる」ようにあなたが話さなくてはならないからです。あなたの部下は全員が大学の経営学部出身ではないでしょう。ですから初歩的な言い方を馬鹿にはできません。

 

 さて、儲けを「売り−買い」と理解するのは、それが「お金で計る」からです。

 会計の基本としてはコレで間違いありません。しかし、経済を理論ではなく、現場の初歩から見てみましょう。

 

 なぜ、人はモノを買うのでしょう?

 なぜ人がモノを「買う」か、と言えば、自分が手放すモノより相手が持っているモノの方が「主観的に高い」からです。

 逆になぜ人がモノを「売る」か、と言えば、自分が手放すモノが相手の持っているモノより「主観的に安い」からです。

 たとえ、どんなに「価格が安く」ても、そんなモノを買うための自分のお金が惜しいと思うなら、売り買いは成立しません。一方で「法外な値段」でも、自分のお金が惜しくなければ、いかがわしい水晶玉でも奇跡を呼ぶブレスレットでも、人は購入するわけです。

 客観的な(数字に表れる)価格というのは、たくさんの取引があることによって決まる平均値にすぎないのです。

 

 あなたが「買う」時は、あなたにとって、手放すお金よりも手に入れるモノが高く、価値あるものに思えるから。逆に言えば「売る」側は、手に入れるお金に比べたら、手放すモノは価値が低いということ。

 つまり、儲けというのは「自分にとってありふれているモノが、相手にとって価値のあるモノ」だから生まれるのです。儲けは数字で表せます(「売り−買い」)が、それはあくまで結果を金銭で計ったもの。儲けとは客観的な数字の前に、主観的な選択で決まるのです。

 

 さて、一昔前なら「モノそのもの」こそが一番不足しているモノでした。もっと正確に言えば、「モノをつくり出せる能力=高度な技術とコスト競争力をもった工場」こそが最も貴重なモノでした。

 

 ちょっと歴史的な話になりますが、第一次産業革命は「軽工業」が中心でした。そういうものは、比較的簡単に工場が出来る。ところが、第二次産業革命以降、産業の中心は機械・素材などになります。そうすると、工場は大量の資本が必要になります。もう誰もが参入できる産業ではなくなります。そうすると「工場は極めて貴重な資産」となるわけです。そういう市場では、「主観的な差」と「客観的な差」はほとんど違いがなかったはずです。

 

 ところが現代は、軽薄短小どころか、サービスのようにモノさえつくらない産業が中心になりました。あるいはコンピュータや IT のように安価な標準品を組み立てる商品が幅をきかせ、また中国が一大工場になりました。

 今では「儲けにおける主観の差」こそが、本当に儲けを永続させてくれる秘密なのです。

 

 まあ、ここまでは本でも触れておりますし、あなたもよく知っていることです。いわば、水泳前の準備運動のようなモノです。

 ここからは、最初に挙げた定義を具体的に考えていきたいと思います。

 では定義の前半部「楽につくる」ということから考えてみましょう。

 

 高い経費をかけるのなら、相手にとって価値のあるモノをつくることは簡単です。高い人件費を払う、高い材料費を払う、あるいは高い店舗コストをかける・・・いずれにしろ可能です。しかし、それらは儲けを約束してくれません。儲けを得るには、他と同じ値段で、あるいは安い値段で仕入れた資源を、他より効率よく動かす、つまり「生産性」を上げるしかありません。

 

 昔なら工場、すなわち生産設備こそが生産性カイゼンの中心でした。

 しかし、先ほども申し上げたように、今、生産設備が生産に占める比率は大いに低下していますし、どんなにトヨタ方式を駆使しても生産性を数倍に上げるということは難しいでしょう。

 けれど現在、生産性を大きくカイゼンできる部分があります。それはサービスや知的生産現場の生産性です。

 そして、サービスや知的生産現場の生産性をアップするための鍵が「楽」という言葉なのです。

 

 「楽につくる」には3つの意味があります。

 

一つは「楽しんで、つくる」ということ。

 サービスや知的生産の生産性は、「労働時間に比例する」ではなく、「労働時間×気働きに比例する」のです。仕事が好きでなければ、楽しんでいなければ、生産性は上がりません。時間のムラをなくす、それが楽しむことです。

 

 第二に「楽に、つくる」ということ。

 これはストレスなくつくるということです。ストレスの多くは他人との軋轢で生まれます。なぜ他人との軋轢がストレスを生むかと言えば、見ているモノが違うからです。同じモノを見ていれば(つまり、意識が同じであれば)大幅にストレスを減らすことが出来ます。コラボレーションの無理をなくすことが楽につくることです。

 

 第三に「楽させて、つくる」こと。

 今までの会社は無茶働きすることが美徳でした。一昔前なら、それは「将来の出世という将来の金銭の確保」でまかなうか、それとも「リストラという将来の金銭の損失」で脅すかで成り立っていました。今までの方法では、今払わなくても将来何らかの形で払う、つまりコストをかけて無茶働きを買っていたわけです。

 当たり前の話で、人は働くことが辛いとき、その代償として金銭を要求するわけです。あるいは、働くことが辛いから、代償として金銭で返してもらえなければ会社への忠誠心をなくすわけです。あるいは仕事が嫌いになり、休みなら仕事を忘れたい、あるいは会社の価値を踏みにじっても気にならない人を育てるのです。

 では働くことが痛みを伴わなければどうか?そう働くことの痛みを取ることは、何も人道や理想論ではなく、冷徹なコスト管理なのです。痛みを取ることは、労働のムリを排除することなのです。

 

 つまり「楽につくる」とは、サービスと知的生産におけるムリ・ムダ・ムラを取り去り、生産性を向上する生産性カイゼン運動なのです。つまり楽につくるとは「生産性を伸ばす」ことなのです。そして、その鍵になるのがブランドマネージメントなのです。

 

      今までの「ハード・ワーク」から、これからは「エンジョイ・ワーク」を目指すことが重要な発送の転換。もちろん、ブランドこそが「仕事エンジョイ革命」の旗印になります。

 次に「高く評価される」ことを考えてみます。

 

 「高く評価される」ということは、本書の中でも『高価格への挑戦』ということで何回も繰り返してきましたので、今更・・・という感じでしょう。

 そこで、一つだけヒントを書いておきたいと思います。

 

 それは「お客さまに、『ありがとう』と言わせる」必要です。

 お客さまに喜ばれるだけでは足りない。「お客さまが、まさか・・・と驚くようなエンターテインメント性」がいま、高く評価されることに求められているのです。

 

  「ウチは職人だから、仕事で勝負」では、残念ながら通用しません。

  相手を「驚かせるにはどうすれば良いか」、それが「高く評価される」ことに繋がるのです。

 

  もう一つ、重要なのは、この目の前で起こる具体性のある評価を、いかに抽象的な会計上のお金と結びつけるかです。

 一番の方法は、「階段法」です。

 現場の評価と会計上の儲けというのは、実際に大きな段差があります。段差が大きすぎて向こうが見えないのです。

 重要なのは、その間をできるだけ小さなステップ(階段)にわけて、一歩の差を小さく、その先がみえるようにすることです。

 例えば、工場なら「提案の件数」や「提案者の人数」、「職階の広がり」などを計数として把握していますね。もちろん、提案というのは質です。しかし、質は把握しにくいし、結果が出るまでに時間がかかる。だから中間に計数をおいていくのです。

 しかも、その計数の関係(相関といいます)を見てみると、けっこう関連がつよいのです。それさえ見えてくれば、現場のやることと、全体の間に「ストーリー」が生まれます。

 現場に必要なのは、数字という結果より前に「自分の努力が、どうつながって結果まで至るかという『ストーリー』」なのです。あなたの会社版の「わらしべ長者」物語を作り出すことこそ、もっとも重要な作業です。

 消費者に物語を与えるのがブランドと言われますが、従業員に物語を与えるのもブランドの仕事なのです。

 さて、「儲けを教えるマニュアル」で重要な点をここで確認しておきましょう。

 

1.儲けとは「自分にとってありふれたものを、他人がとても感謝してくれること」。数字に表れるのは結果であり、まず、この関係無しに儲けはないと思わせること。儲けは「主観が生む」ことを徹底すること。

 

2.自分にとって一番ありふれたものは、「自分」。自分の働き方にアイデアとエンジョイを持ち込んで、「どうやったらお客さまを驚かせられるか」をゲームのように楽しむように工夫すること。

 

3.自分の努力がいかに結果に繋がっていくのかの物語をつくりだすこと。個人の努力と結果の数字を単純に結びつけるのではなく、途中に小さな階段(観測点)をつくって、観測点の間の関係をつかんでおくこと。それが物語に真実みをつくり出す。

 

 原則はこれだけです。

 もちろん、これをあなたの会社なりに書き出すことは大変ですが、その労を惜しむ人に何の儲けも生まれないのは、もう当然のこと。

 ただ原則は単純なので、努力しがいはあるはずです。

  ぜひ、素晴らしい「儲け物語」を描き出してください。

 

         
 
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